舞台WILDの話

こんばんぬ

 

2019年6月5日、裕翔くんの初主演のストレートプレイ『WILD』が梅田芸術劇場シアタードラマシティにて大千穐楽を迎えました。

3月2日の情報解禁からの約3ヶ月がとても優しい日々だったという記憶を残しておきたいのでぐあっと書きます。

 

 

 

裕翔くんはものすごくかっこいいのに"かっこいい"が先行しない人です。美しくて眩しくてかわいくて無邪気でいつまでも子供心を忘れていなくて、運動神経抜群で爽やかでなんでもこなしてしまう。誰がいつどこから見てもハンサムで演技力にも定評があるけど実は挫折もしていて、王道を走り続けているように見えるけどでもそうではなくて、新たな道をすらっと切り開いてコツコツとまた新しい世界を教えてくれる人。内面の細やかさになんて素敵な人なんだろう‥と思っていると、え!顔がいいな!スタイルも抜群だな!あれ?!こんなにかっこいい人いたの?!!となる。(全て個人的見解です) 

そんな彼の舞台初主演作となったWILDは2013年に世界中を震撼させたスノーデン事件を元にした戯曲の日本初演でした。誰もが一度はニュースで聞いたことがあるであろう大事件だけれど今の日本で"スノーデン"と聞いてピンと来る人は果たしてどれくらいいるのだろうか。しかもこの舞台は事件"そのもの"ではなくそれに着想を得て"その先"を描いたもの。知ってしまうと怖いから知らなかったことにして流してしまうけど、追求する必要がきっとあるもの。本質にたどり着くのが難しいから知ったかぶるけど実は知らないもの、、とにかく、この題材は裕翔くんがものすごくハマり役だと思った。

 

私が初めて観たのは4/29、裕翔くんにとって平成最後となる公演日に東京グローブ座にお邪魔しました。事前知識はスノーデンの映画と裕翔くんがインタビューを受けた雑誌3誌。圧倒された記憶しかない。出演者はたった3人で、衣装が豪華なわけでもなければセットの展開もない。ただただものすごい量のセリフが襲ってきてアンドリューと一緒に翻弄された100分という記憶だけだった。正直、何度見てもほんとうのことなんてわからないしほんとうのことなんてないのかもしれない。でもなんというか、裕翔くんがアンドリューを生きたことだけは確かだから、ここからは合計6公演の観劇を通して私が目にしたものを大まかではあるけど、私の脳が受け取った通りにざっくりと文字に起こしてみようと思う。

 

 

 

 

 

 

さわさわざわざわ‥騒音のような雑音のような、日常で何気なく耳にしているけど気に留めることのないその辺にあふれている音の中に身を置いて"特徴のないごくありふれたホテルの一室"のセットを眺めながら開演を待っていると次第に音が大きくなり真っ暗になる。次の瞬間、パッと音が止んでさっきそこにあったホテルの一室が照らされた。アンドリューと女が握手している。さっきまで見ていたはずのセットなのに、そこにふっと浮かび上がるように二人と部屋が現れた。第一声でこの二人が初対面だと気づく。アンドリューが一人でいたところに訪ねてきた女を招き入れたのだろうか、とにかく初対面だということだけわかる。裕翔くんの顔が美しいことと女の饒舌さに息つく暇もなくどんどん進んでいって、私はそこに意図があるのかすらわからない言葉の応酬に食らいつくように目を凝らした。アンドリューの手には黄色に赤いラインの入ったボール、女の手にはお酒の入ったグラスがある。女がボールを持つと女がアンドリューを手に納めたような感覚が襲い、アンドリューがグラスを手にすると知らないうちに女に従ったように感じた。なぜか知っている情報や覚えているのかわざと間違えているのかわからない彼女の話を絶妙に食い込ませながらひたすらアンドリューをかき乱す女は「あの人」の関係者なのかそうじゃないのか全くわからなくて、そのなんの変哲もない服装にすら疑問を抱いた。ひと通りやりとりをしたところで、アンドリューの髪が乱れ始めていることに気づく。アンドリューは女のことを疑いつつもおそらくあの人の元から来た自分の味方だと信じている。これから先どうするかどうなるかに関係のない話はこのときのアンドリューにとって意味がないからこんなところでエネルギーを使いたくないのだと思う。

女が去るとまたありふれた音がして真っ暗になった。そしたらまたパッと音が止んで今度はおそらく夕方になった。このとき初めて時間の経過を知った。ノックの音がして不審そうにドアを見るアンドリューを見て、女と会う前と今とではアンドリューの中で気持ちに変化が起きているのかなと思った。男が入ってくる。慎重にノックしてきたわりには勢いよく転げこんでくる。このときのアンドリューはドアに挟まれて小さく見えた。男は心なしか女よりも「あの人」に関係がありそうな雰囲気で話し始めた。女のことは信じるなと言わんばかりに話す。突然ものすごく大げさに差し出されたチョコレートをアンドリューは一口で食べた。食べながら喋るし包み紙で遊びながらも喋る。座る位置をコロコロ変えるアンドリューとなんだか包み込むように説得しているような喋り方でアンドリューの気持ちに一定速度で語りかけるように話す男。女と会話したことが引っかかっているのか、アンドリューの取り乱すスピードが上がる。このときは女にも男にも疑念を抱いていて、でも信じたい気持ちがあるように見えた。キャパオーバーなのか混乱しながら怒りにも近い嘆きで男を部屋から出す。

また部屋が暗くなるとき、今度は電話に光が当たる。女とも男とも話題に上がった電話が気になって疑念の方向が電話に向かうアンドリューの心情が見えたように思った。次に明るくなったときは夜。眠れなくなったアンドリューはシャツを脱いで腹筋をしている。邪念を取っ払うかのように腹筋しているアンドリューの元にまた女が現れる。女はさっきよりもっと意味のなさそうな話をする。女を信じる為に自傷行為を求める。結果、握手はしないけど"一員"になったアンドリューは少し安心したような面持ちで女と約束をする。でもこのとき、疑念の方向が部屋に飾られた抽象画に向く。女が去ってまた暗くなるとき電話とお酒と抽象画に光が当たる。女を信じることを済ませたと思ったら、疑念を抱く対象がこの部屋になった。

パッと照らされたら朝、女と男が同時に部屋にいる。でもアンドリューはもうそんなことどうでもよくて、部屋を疑っている。アンドリューが話の主導権を握り始めると女は手のひらを返すように全てを投げ捨てる。ここで遊びは終わり。そもそも作り物だったのかわからないけど女から笑顔が消える。女と男はアンドリューに対して呆れたような感情をあからさまに出してくる。アンドリューはまた、女と男に翻弄される。

 

ひっくり返したのではなく指をさしただけ。

 

 

 

最後はまっすぐに遠くを見つめるアンドリューが暗転と同時に消える。今見ていたものは全部嘘だったのかと思うほどにひゅっと消える。

次の瞬間に立っていたのはアンドリューを演じた裕翔くんだった。 

 

世の中の不確かさを突きつけられるような、そんな舞台だった。

私の受け取った大まかなこの舞台で見たものを意訳や咀嚼せずにただざっくり並べたらこうなった、ということであって全く感想でも何でもないけど、この舞台を通して少し立ち止まったり考えてみる方法がわかったのかもしれないと思った。

 

ここまで読んでくださった方の中にはこの舞台を生で見ていない人もいると思うから、私の書いたものをどうか疑ってください。そうそう!と思うことは簡単だけど、あれ、そもそもこれは?あれは?なんのどこからの情報?そんなの見たっけ?と思ってみるのが多分この戯曲を落とし込んでいくことなのではと思う。

 

わからないけど。

 

 

 

 

裕翔くんの演じたアンドリューに会えたこと、アンドリューとともに私も女に翻弄されたこと、男に不信感を抱いたり演出におののいたこと、最後に恐怖が畳み掛けるように襲ってきて外に出たらこの世界の床を探してしまったこと、

2019年4月~6月の私は裕翔くんの世界に翻弄されながら信じるということについて考えたり、翻弄される不思議な感覚を何度も体感して生きることや愛する気持ちを改めて見つめてみたりしました。

 

What I love to Do.

 

 

 

 

裕翔くんがストレートプレイに挑戦してくれたことに改めて敬意を。